野外技術 秋冬春編
克寒スキル
寒さに耐えることを耐寒といいます。ここではもっとポジティブな姿勢で寒さを克服することを克寒と呼ぶことにし、秋・冬・春キャンプの基本的な克寒技術を紹介します。さらに優れた方法が他にもあると思いますので、「1.禁止事項」を除き、「2」~「6」までの事項は単に参考例として紹介させていただきます。寒さの度合いを考慮し、あくまでご自身で安全性を検討してご判断ください。(記事内容に沿った行動によって発生した安全上の問題については免責とさせていただきます。)
1. 禁止事項
日中あるいは就寝前にテント内を、薪ストープ・石油コンロ等の燃焼器具で温められる方がおられます。その時間までは、自己責任範囲の行動であり、キャンプ場としては「換気してください」という以外に特に何も言いません。ただし、就寝時にはそれら燃焼器具を完全に消火することを基本ルールとしていますので順守してください。可能であればテント外に器具を出して就寝されることをお勧めします。なぜなら、夜間の密室テント内での燃焼器具の使用は、不完全燃焼による一酸化炭素中毒や、火災・火傷等の重大事故を引き起こす原因となることがあるからです。特に、木炭・練炭等による室内暖房は一酸化炭素中毒を起こす危険度が極めて高く、一切禁止としています。
2. テントの克寒技術
2-1. サイトの選択
克寒の基本はサイトの雨水対策や湿気対策です。水はけの良いサイトの選択(わずかな傾斜が最適)、周溝のあるサイトの選択、許可されている場合はテント周りの溝堀り等です。
2-2. ダブルウォール テント
ダブルウォール(フライとインナーテントの一体型)型のテントを使うことが望ましく、これも寒中キャンプの基本の一つです。
※シングルウォールならば、タープ・フライ・ブルーシート等をテント上に張って覆います。空隙があることによって結露を防げます。空隙を空けて張ることが面倒なら、上に被せて包むようにするだけでも効果があります。テントのスカートをつけることもお勧めです。
2-3. カンガルースタイル
カンガルースタイルとは、テントの中にさらに小さなテントを張る方法です。高い保温効果があります。固定大テントの中に小テントを張るという方法もあり、冬キャンプの初心者や寒さが苦手な方にお勧めします。
※この時、大小のテントはどちらも通気のための隙間を空けておくことが重要なポイントです。
2-4. 床の断湿・断熱
以上の配慮の上にテントの床を工夫します。「グランドシート(断湿ビニールシート)+銀マット+各種温感マット(パッド)」のように三重構造以上にすることをお勧めします。
3. 衣類の克寒技術
3-1. 肌着・下着・スパッツ・その他インナー
・肌着は上下ともにピッタリしたヒートテックを一枚ずつ着ると良いでしょう。ただし沢山汗をかくような時や雨で濡れる場合、ヒートテックは体を冷やすため、着ない方が良いとされます。
・ヒートテックの上に、綿製(コットン)の長そで長ズボン下を+1枚ずつ重ね着することをお勧めします。ヒートテック同様に汗を大量にかく時は化繊の方が良いとされます。コットンを着る場合は汗を逃がすよう少しダブついたものが良いでしょう。
・コットン下着の上に、“ラクダ”あるいはウールの長そで長ズボン下を重ね着すれば完璧です。これも汗を通すように少しダブついたものが良いでしょう。
※ラクダ下着やウール下着を古典的と侮ってはいけません。なお、これらはコットンの重ね着でも代替できます。
なお体温保持のためには、上半身下着のスソをズボン下着の中に差し入れ、空気が漏れないよう密閉することが重要です。
3-2. 上着・パンツ(=ズボン)等
各種シャツ・フリース・パーカー・パンツ等は、日中の上着となるものです。断熱保温効果があり趣味や好みに合うものを選び楽しまれるとよいでしょう。
3-3. 野外作業着
防水・防寒・透湿ジャケット&パンツがお勧めです。
※0℃を下回る場合、薄いモコモコスボンだけで耐えることは困難です。本格的な防水防寒具の着用が理想的。スキーウエアはまさにこれに相当します。土木作業用等の防水防寒具は低価格でお値打ちです。
3-4. 靴下・靴
スキー・ボード・登山用等の厚手の長靴下が必要です。重ね履きしても結構です。なお、就寝時には使いませんが、靴も断熱性のある靴を用意することをお勧めします。
3-5. マスク・エリマキ・手袋
必ず準備してきて、忘れないようお使いください。
※肌の露出や直接外気との接触が体温放出の元凶です。就寝時のマスクは上着一枚分の温感効果があります。また、ネックウォーマーの温感効果も優れています。
3-6. 外套ならびに柔らかな夜具としてのダウンジャケット
フード付きダウンジャケット(FP:600Fp~1000FP)がお勧めです。
※就寝時は防寒・透湿ジャケットやフード付きダウンジャケットが保温効果上最適。ダウンは体の拘束が少ないので夜具としてお勧めです。顔面前でフードをヒモで絞れるタイプがよいと思います。要はめいっぱい着込んで肌を露出しないようにし、肩や頭部周りの体熱を逃さないよう工夫して寝るということです。この時、呼吸や換気が確保されるよう十分注意します。
4. 寝具の克寒技術
4-1. 寝袋
冬用寝袋が最適です。-30℃耐用の大型寝袋などが望まれます。
※夏用もしくはフルシーズン用しかない場合は、毛布を体に巻いて寝袋に入り、寝袋も二枚重ねて使う、さらにはその上から掛布団をかけるなどの方法を駆使します。ヒートテック毛布やフリース毛布は温感効果が高いと言われています。
4-2. ベッド
地面からの冷えをカットするために床に直接寝るのではなく、エアベッドなど各種ベッドを使用することも一つの手です。
5. 暖房器具の克寒技術
5-1. バッテリー使用の電熱暖房
床暖房や寝具保温に携帯バッテリーを使う場合は「ポータブル電源+電気毛布」が最低消費電力で最強温感効果があります。
電気マットや電気こたつは消費電力が大きく持続性や経済性で難があり、キャンプ場に配備されている電源を使う場合にブレーカーを落し周囲の方に迷惑をかけることがあります。
5-2. 湯たんぽ
就寝時OK。低温やけどに気をつける必要があります。
5-3. 焚き火
ただし就寝時消火。
5-4. 薪ストープ
ただし就寝時消火。
5-5. 石油コンロ
ただし就寝時消火。
5-6. その他
6. その他の克寒技術
6-1. ほっかほか
低温やけどに注意。
6-2. 常備風邪薬
重症化する前に、危ないなと思った時点で使うと良いようです。
6-3. 運動
カロリーの高いものを食べ運動をすることで体が温まります。薪割道場で修行など最適。
6-4. 鍋物、スープ、ホットミルク、ホットココアなど
温かな食べ物や飲み物が必要です。
6-5. 成人の場合、熱かん・ホットワイン・各種酒のお湯割り
ただし、ほどほどに。やり過ぎると寒さより恐ろしい結末がまっています。
6-6. 温かい心
笑顔やほっこりする話は親愛ホルモンの分泌を促進し心身の耐久力を強化すると考えられています。